●「就活戦略」就職活動の成功に向けた「就活のノウハウとまとめ」
・大卒者の5人に1人以上が安定雇用を獲得できず,2013年には非正規雇用は36.6%にまで上昇.
・大手(人気)企業へ入社できるのは就活生の約4%,高学歴を優遇する学歴フィルターは増加傾向.
・Bad Start, Bad Finish問題.新卒採用に失敗すると日本社会での成功は難しくなる.
・就活は弱肉強食.複数の内定を得る学生と,ブラック企業で妥協する学生の格差拡大.
●就職活動は甘くない! 人気企業・大企業への内定は依然として熾烈な競争である
経済環境の好転もあり近年の採用環境は良好です.史上稀に見る売り手市場が続いていると言っても差し支えないでしょう.人材難で採用増,学生優位とのニュースも日々報道されています.実際に輸出産業をはじめ企業業績は確かに回復し,過去最高の利益を計上する企業も出てきています.しかし,業績がこの数年で回復したからといって企業が「厳選採用」のスタンスを変えたのでしょうか?
●2011年卒の内定率は過去最低記録を更新していた
この事実をご存知ですか? 5年少々前,大学生の新卒採用の「内定率低下」が大きな問題となりました.リーマンショック,ユーロ危機と度重なる世界景気のクラッシュ.日本経済の長期低迷,企業のグローバル化による「外国人学生の採用増加」など,社会環境は予断を許さず「就職浪人が増加」し,現役世代との熾烈なパイの争いとなりました.
過去にも「就職氷河期」と呼ばれる厳しい時代がありました.特に1990年代中頃から2000年代前半に卒業した世代は,就職に失敗する人間が大量発生したことから,失われた世代「ロストジェネレーション」と呼ばれ,いまなお非正規雇用の扱いなども含め社会問題の対応に課題を投げかけています.これがなにを意味しているのでしょう?
●新卒採用に失敗すると,現在の日本ではリカバリーは難しい
だからロストジェネレーション世代が苦しんでおり,留年する就職浪人が大量発生しました.新卒採用制度の良し悪しは別として,これが制度であり現実である以上,いかにして新卒採用での就職活動を成功させるか? これが重要であることは間違いありません.
●転職でステップアップするのは困難
一番多くの可能性と選択肢が与えられる新卒就職にて成功できなかった人間が,さらに競争の激しい「転職市場」で納得のいく職を得ることが果たしてできるのでしょうか? なによりも転職市場の母数を見れば,新卒とは可能性の差が雲泥の差であることは明らかです.
いくら外部環境が悪くとも,競争倍率が上がろうとも,ある意味公平で多くのチャンスが示されている新卒採用で,なんとしても納得のいく企業から内定を勝ち取ること.これが就職活動ではすべてです.
●あなたはどんな仕事や職業に就きたいのか?
ちまたでは,自分のやりたいことを見つけなさい,自己分析をして自分の適正に合う企業を見つけなさい,5年後10年後を見据えて企業選びをしなさい…などといった学生を鼓舞する科白が溢れています. 就業経験を持たない学生が,どうやって職業を,働いている姿をイメージすることができるというのでしょう? 世の中に夢のある仕事がどれだけありますか?
自己分析も志望動機も業界・企業研究ももちろん必要でしょう.理想論はいろんなところに書いてあります.大切なのは「長く続けられる/続けたいと思う仕事はなにか?」それを実現できる企業から内定を得て,納得して就職活動を終えることでしょう.
そのために「志望企業への内定」をゴールとして捉え,内定のためにどのような手順を踏み,対策を実施すれば効率的であるかを本「就職活動戦略」でナビゲートします.是非ご活用ください!
1.「就活スケジュール」就活の準備と進め方 選考時期を確認して戦略を立てよう
2.「就活の自己分析」就職活動における効果的な自己分析の方法と基礎能力
3.「就活の筆記試験」就職活動における筆記試験「SPI」&「英語試験」の傾向と対策
4.「就活の業界分析と企業分析」幅広く情報収集して知識を深掘りする
5.「就活の企業説明会」企業説明会に得る物なし 志望企業リストを作りESを多く提出しよう
6.「就活のエントリーシート」通過するESの書き方と対策 アピールポイントを具体的に記そう!
7.「就活の面接対策」就活の面接とグループディスカッションを突破するための戦略
8.「就職先の決め方」最終面接のポイントと内定辞退の方法(内定を得た後にすべきこと)
★番外★「就活まとめ」就活に役立つ情報を収集して就活を成功させよ「就職活動まとめ」
1-1.新卒採用の重要性を認識し,死にもの狂いで頑張ろう!
日本の社会/雇用システムにおいて,新卒採用に失敗するとリカバリーは非常に困難です.制度の是非はさておき,日本は新卒一括採用,終身雇用制に重きを置いているためです.もう一つの柱である年功序列制度については変化しつつありますが,新卒一括採用に代わる採用を軸にしている企業はほとんどありません.
大学生活は4年間,企業生活は最大40数年間.期間と影響のインパクトを考えれば,就職活動は人生の最も大きな岐路の一つであるとも言えるでしょう.その人生の一大イベントの成否が大学3年生の冬から大学4年の夏にかけての半年の努力と運によって決まります.この重要性を認識しないまま,就職活動にやみくもに突っ込む学生をあまりにも多く見てきました.
そうするとどのような道を辿るのか? よくある事例を参考に見ていきましょう.
就職ガイダンスに参加したものの,全体スケジュールが頭に入っていないため,いつなにをすべきかがわからない.そのため,プレエントリーと企業説明会参加に注力し,就活を頑張っていると勘違いする.次第にエントリーシートの締切に追われ,いつの間にか就活の真っ只中.心配だから闇雲にエントリーの数だけ増やしていく.エントリー先は名の知れた企業ばかり.半分もESが通らず,筆記試験対策が不十分であるため,面接まで辿り着けない.やっと迎えた面接も自身の軸や方向性が明確でないために自己PRが脆弱で,不安を抱えながら面接に臨む.付け焼刃の志望動機で相手に訴えかける力が弱ければ,何十倍~何百倍の選考を突破できるはずもない.
就活のいろんな段階で落とされ,しかもその明確な理由が明示されないため,人格を否定されるような思いを何度も味わい疲弊していく.結果,志望する企業のレベルを落としたり,どこでも内定が貰えれば良いと投げやりになる.夏の炎天下の中,リクルートスーツを着ることが嫌になり,諦めて留年を選択する.もしくは1つだけ内定を得たブラック企業で妥協する.
ブラック企業や非正規雇用に就くことによるリスクも同じように言えるでしょう.様々な面で一般に優良企業と言われる企業に入社した人間よりも劣悪な環境に置かれます.ブラック企業や非正規雇用は収入,労働環境,福利厚生,将来性,すべてにおいて劣っているのが現実です.
そして,そんな酷い状況を悲観してどうにか環境を変えようと転職を考える.でも,残念ながらステップアップの転職は非常に困難です.日本企業は学歴や前職での経歴を重視するために,ブラック企業や非正規雇用の経歴が評価されることはなく,いわゆる大企業に転職するチャンスはほぼ皆無であるのが現実です.
例えば,2012年秋,三井物産が中途採用を募集したところ約5600人の応募がありました.その中から内定通知を得られたのは60人.100倍弱の倍率ですね.内定者の出身も外資系コンサルタント企業,メガバンク,総合電機,マスコミ等多彩であったようですが,この倍率を突破するのは熾烈な競争であり,能力と経験がPRでき,相手に納得して貰えなければ勝利などつかめるはずもありません.内定を得た方々は相当の経歴と能力があったことに間違いないでしょう.
つまりは,極論すればインドのカースト制度と同じであると言えます.階層を超えたとらばーゆは困難であり,新卒で入社した企業のからのステップアップ転職は非常に困難である.もちろんこれは一般論であり,自らの力で道を切り開いていく方もいます.それでも,新卒採用時の可能性に比べればずっと低くなります.
とするならば,そのような事態を避けるためにどのようにすべきでしょうか?
大学新卒採用時に断固たる決意を持って就職活動に臨み,できるだけ収入や福利厚生,将来性の魅力の高い企業から内定を得ること.これが単純ではありますが目指すゴールでしょう.もちろん未来のことはわかりません.現在の総合電機の苦境を10年前に予想できた人間はほとんどいないでしょうし,ソーシャルゲーム業界がこれほどの成長を遂げると見据えていた人間がいれば,株でも買って大金を得ているでしょう.それでも,ブラック企業や非正規雇用を避けて,優良と言われる企業に就社すれば,ステップアップのチャンスを得られる機会はずっと多くなるはずです.
だから, 就職活動に危機感を持って臨みましょう! 自分の限界まで頑張りましょう! 就職活動を決して安易に考えてはいけません.ここがあなたのターニングポイントで一生を左右する選択の一つであるという認識を常に持つことが大切です.死にもの狂いで頑張ることで,より良い結果がついてきます.就職活動は運や縁の要素も非常に大きいので,努力したからといって報われることが約束されるわけではありません.それでも,努力せずに良い結果が出ることはなく,努力することで確実に成功確率は上がります.
この就職活動戦線で有効に戦える戦略をこれから示していきますので,参考にしていただき,自身の武器としていきましょう!
1-2.計画的な貯金をしよう!お金に余裕がなければ奨学金や親から借りること!
私が前職の大手通信企業で採用活動及びリクルーターをしている時,学生の口から次の言葉を聴くのが一番嫌いでした.
「その日はバイトがあるので,別の日にしていただけないでしょうか?」
採用側のアポを取る人間は何十人,場合によっては百数十人の学生に対して連絡をします.大学の授業や他社の面接であれば配慮し,別の日程を提示することも検討しますが,バイトを理由にこちらのアポを変更されると,心の底からうんざりします.あなたの就職活動はバイトより優先順位が低いのですか? と.
何度も繰り返しますが,最初の就職先は生涯の収入やキャリア形成に大きく影響します.それは生涯年収が決まることも意味します.時給1000円程度のバイトを優先して,就職活動に悪影響を与えるのはナンセンスではないでしょうか? どうしてもお金がなければバイトをするのも仕方がありませんが,それでももしやるならば,柔軟に勤務日/シフトを変更できるバイトをするべきです.そもそも,就職活動のわずか半年足らずの期間,バイトで時間を切り売りする余裕があなたにはありますか? そんな時間があれば,ESを一つでも多く書き,筆記試験や面接対策に時間を投じるべきではないでしょうか?
そのために,就職活動費(スーツ購入,証明写真,交通費,宿泊費 等)+生活費を就職活動前に貯金しておく必要があります.特に地方の学生であれば交通費が膨らむ事態も想定されるので,事前にいくらいるのかざっくりと計算しておきましょう.そして大学3年生の冬にどうしてもその就活費用が賄えないと判明した場合,親に相談するか金策を打ちましょう.
親にとって一番のリスクはあなたが就職浪人をしたり,すぐ辞めてしまってニートになることです.自身の納得のいく企業から内定を得て,頑張って働き続けてくれることを期待しているに違いありません.とするならば,あなたが就職活動する際に資金不足が原因でベストな活動ができないとするならば,それを避けるための先行投資として,数万円~十数万円はリスクに対する安価なヘッジであるはずです.お金がないことを正直に詫びて,お金を親から借りる策を打ち,全力で就職活動に臨むこと.それが戦略ではないでしょうか? まともな企業にいけば,借りたお金は初年度のボーナスで返済できます.納得のいく就職先から内定を得て,感謝の気持ちを込めて借りた金以上で返しましょう!
なお,どうしても親や親族からお金を借りることが困難な場合,奨学金や教育ローンといった低金利のローンがあります.大学の事務室や専用窓口に相談して,就職活動資金を確保しましょう.そんな事態にならぬよう,アルバイト等で計画的な貯金を大学3年生の冬までにしておくこと.これも大切な準備です.
1-3.戦略を持って就活を進めること!就活は準備と計画が重要.逆線表をひけ!
就職活動に関わらず,目標を達成するためには効率的な手順が存在します.以下に就職活動における目標達成に向けたフェーズと対策について示します.
①目標(ゴール)を明確にすること
就活の最終目標は希望する企業からの内々定でしょう.ただし,第一希望の企業から内定を得られる可能性は,残念ながら相当に低いと言わざるを得ません.運と縁の要素が大きい就職活動において,目標を1社と定めるのは無謀です.しかし,
「第一志望群10社の企業から,1社以上の内々定を得ること」
このような目標を定めれば,達成確率はぐっと上がります.現実的な目標を定め,達成に向けて努力しましょう.また,目標を明確にするもう一つ効果として,やる気が高まるということが挙げられます.
※この目標のためには「エントリー企業リスト」が非常に重要になりますので,その点は以降の章で解説します.
②目標(ゴール)達成に向けた課題/タスクを明確にすること
就職活動における一般的な課題/タスクは「ES(エントリーシート)」,「筆記試験」,「面接/ディスカッション」となります.その他に就職活動に集中できないリスク(就職活動資金や単位取得)について洗い出しましょう.
③目標(ゴール)達成までの時間を明確にし,スケジュールを立てること
各業界によっても異なりますが「ES」は大学4年生の4月以降,一斉に受付が開始されます.自身のエントリーする業界や企業のES受付時期を事前に確認しておきましょう.そして,ここが非常に重要なポイントですが,ES受付は一定期間のみで,締切を過ぎるとエントリーできない.という点です.つまりは,大学4年生の夏前になって,それまでリストから漏れていた企業に魅力を感じエントリーを実施しようとしても,既に締切を過ぎておりエントリーできない.という事態が往々にして発生します.ES提出後には筆記試験,面接等の選考が続きますが,とにもかくにもESの提出期間は企業によっても異なり,ES提出をしないことには就職活動は進みませんので,しっかりとエントリー先のES受付期間を確認し,スケジュールを立てましょう.また,筆記試験対策も大学3年生の冬までに終えておきましょう.
これをフェア/アンフェアと叫んでも仕方がありません.学歴フィルターは就職活動のシステムに組み込まれています.とするならば,その中で最大限のパフォーマンスを発揮することが重要ではないでしょうか?
簡単に言えば,「旧帝国大+早慶+MARCH&関関同立+東工大・一橋・神大・上智等難関大+一部の駅弁大学」以外の大学に在籍している学生の方は,就職企業人気ランキングの上位200社の企業を複数社エントリーするべきではありません.内定受理が消費税並みの確率になってしまうからです.
同じ大学から300人の学生がエントリーして,内定者が一人出る.倍率は300倍ですね.300社ESを提出しますか? 数を打てば当たると考えている方は大事なポイントを見落としています.ある学生が倍率100倍の企業を100社受けたとしても,内々定が出る確率はほぼ0%か複数社内定かのどちらかです.これはどういうことかというと,企業が求める能力やポテンシャルを持っていなければ,人気企業を100社受けようがすべて落ちます.笑えない話ですが,よく見る事例です.逆に,倍率が100倍だろうが300倍だろうが,難関企業から内定を貰う学生はほぼ確実に複数社からの内定を得ます.ゼロサムの法則に近いことが就職活動では起こります.
難関大学でも厳しい現実をいえば,2014年現在の就職活動で,MARCH&関関同立の学生が財閥系商社から内定を得る可能性は限りなく低いです.各大学で1名~2名の枠に入れる能力と経験,運と縁がなければ内々定を得られることはありません.それでも,各校から何百人もの学生がエントリーをし,財閥系商社のいずれかから内々定を得るという目標を立てています.
何故ここで学歴フィルターを認識することを促すのかと言えば,無駄な時間を費やすよりは,やるべきことに時間を投じるべきだと提案したいからです.そしてなによりも学生は往々にして一部の企業にエントリーを偏らせ,倍率を異常に高めています.学生が見えていない優良企業はたくさん存在します.だから,学歴フィルターをしっかりと認識し,自分に合わせた企業にエントリーすることで,貴重な時間を適切な対象に投じることで目標達成の確率を上げましょう.
※繰り返しますが,エントリー企業リストが非常に重要であり,以降の章で詳しく説明します.
2-1.自己分析のやり方とアプローチ 性格と欲求と合わせてステータスを客観的に分析する
就職活動で最もよく耳にする言葉の一つが自己分析であると思います.例えば「就職活動で一番大事なのは自己分析だ!」とか「しっかりと自己分析ができていないと面接で通らない!」といった台詞がまことしやかに語られています.確かに自分の性格や長所・短所を把握することで志望先選択に活かすとともに,ESや面接でのPRポイントを明確にすることが重要となります.
それでは,自己分析では実施しなければならないことは? どのようにして自己分析を実施するのが効率的なのでしょう?
書店で就職活動関連書籍を捜せば,自己分析に関する本が幾つも出版されており,その中でしっくりくるものに腰を据えて取り組めば,大体の準備は整うでしょう.自己分析は自己の内面に対して客観的に向き合う作業です.自身の価値観や経験の洗い出しの作業と言えます.このノウハウは就活対策本に数多く記されていますし,次項で効率的な方法を紹介します.
それに加えてもう一つ「ステータス/ポジショニング」の観点からの自己分析が重要である.と私は提案します.何故か? それは就職活動の最も重要な分岐点がエントリー企業リストを作成することであると私は考えるからです.適切な志望企業を選択できずして,就職活動の成功は困難です.このエントリー企業リストを作成するために,「ステータス/ポジショニング分析」が欠かせません.
前章で記した学歴フィルターにも関連しますが,いま自分がどの位置にいるのか? ステータスとポジショニングをしっかりと確認しておくことが,就職活動という戦に臨むための必須の情報となります.例えば,大学受験の際には誰しもが自身の学力/偏差値を把握して,志望校を決めることでしょう.合格の可能性を計算せずに受験に臨む生徒などどこにもいません.
観点は3つ.「学歴」「試験突破力」「基礎能力」です.先ずは学歴について.前章で記した約20校の難関大学に所属している学生でなければ,超大手企業や就職人気ランキング上位200社に掲載される企業から内定を得ることはまず不可能です.これらの企業は倍率が数十倍~数百倍にも達する程に学生エントリーがあり,学生を絞るためにあるためターゲット校を設定していることがほとんどです.つまりは,ターゲット校以外からの学生はまず採用しません.
次に学力について.もしあなたが難関大学の学生であったとしても,筆記試験に通るだけの知識と企業が求める英語力がなければ,各校何十人/何百人ものライバルがいる中で,困難な戦いになるでしょう.基礎能力については,本章の後半にて紹介します.
とにもかくにも, 自分の能力&ステータスを知ることが重要です.酷なようですが,希望的観測は不幸を招くことが大半です.駄目だ無理だとあなたを絶望させたいのではなく,もっとも可能性の高い戦略を提案したい.そう考えています.「悲観的に準備し楽観的に対処すること」が就職活動においても非常に重要な点であることを意識しておきましょう.
2-2.自己分析はどんな人間か? どんな社会人になりたいか?を明確にすることである
本項では内面自己分析「(性格・欲求)分析」について記します.自己分析には正解がなく,またどこまでやれば十分であるのかが明確ではないというやっかいな作業です.一冊本を購入して納得のいくまで自己分析に取り組むのが理想的ですが,自己分析が徹底できれば就職活動で上手くいくか? 内定率が上がるか? といえば一概にそうとも言えません.何故ならばいま持っているもの(能力/ステータス)がなければ,自己分析を深堀りしたところで,武器にならないからです.そのため,自己分析疲れにならない程度にしっかりと実施しましょうというスタンスを提案します.それでも,自分の持っている武器を捜すための作業である自己分析が重要であることには変わりがないので,以下の4点からの効率的なアプローチを提案します.自分の武器をみつけ,使いこなせるようになりましょう.
①ここにいる自分:
自分はどんな性格をしているのか?現在どんな生活を送っているのか? いろいろな観点からいまここにいる自分を客観的に見つめ直しましょう.過去を振り返る作業がメインになります.喜怒哀楽の観点や日々の営み,大切にしていること,頑張っていること,自分はどんな人間であるのかを冷静に分析しましょう.具体的にはいままで自分がしてきた行動について「なぜそうしたのか」「なぜそう考えたのか」を探っていく作業です.ここからあなたの価値基準が見えてくることでしょう.例えば,変化のない平穏な生活を選んで送っているとか,海外留学で一人日本人のいない環境に飛び込んだとか,これまでの選択があなたの性格と傾向を表していることでしょう.
②ありたい自分:
自分の理想像を描き出す作業です.どんな人間になりたいのか? 物理的欲求からではなく,性格や価値観の面から描いてください.将来(例えば10年後)どのような姿でありたいか? 企業で社内一の営業マンになりたい,独立して自分の店を出したい,ITベンチャーを立ち上げたい等,将来の夢や展望はなにか? 目の前のことだけではく,自分が将来どうありたいかを本音で正直に書き出すことで,それに向かう道筋が見えてくるはずです.
③手に入れたいもの:
誰しもお金をたくさん稼ぎたいでしょう.ここで必要なことは現実的に何を望むのか? ということです.お金を稼ぐのは大変なことです.時間やプライベートを犠牲にしてでもお金が大事だと考えるのか,それとも地元で安定した生活を送りたいのか,9時~17時の生活で収入よりもプライベートや趣味を大切にしたいのか等々,人によって大切にする価値観は違います.お金や住む場所,働く場所,趣味,嗜好等いろんな欲求がそれぞれにあると思いますので,求めるものを明確にしておきましょう.
④やりたいこと:
この点が最も影響する項目になるかもしれません.例えば,マスコミやアパレルに就職を希望する学生は,何故その業界に就職したいのか? 論理的かつ明確に説明できない場合が非常に多いです.番組制作に携わりたいとか,好きなものを売り物にしていきたいとか,やりたいことは自己分析の一つの要素でしかありません.ここで是非考えて貰いたいのは,志望先の業界や企業ではなく職種です.人と関わる仕事が苦手な人に営業は向かないでしょうし,設計やシステムに向かうことが好きになれなければSE職は苦痛になりかねません.マーケティングや企画,商品開発などいろんな職種があります.営業であれば企業によって売る対象と環境が変わりますが,やることにそれほどの違いはありませんし,マーケティングも扱う商品とターゲットが変わるだけですので,職種の観点からやりたいことを明確にすることをお勧めします.
以上の4点から自己分析を実施することで,自身の求めることが見えてくるはずです.それに向けて業界・企業選択をすることで,自分に合わない企業(職種)を選ぶリスクを減らしましょう.
2-3.就職活動における基礎能力を意識しよう!
国が「社会人基礎力」および「就職基礎能力」というものを提示しているのをご存知でしょうか?
「社会人基礎力」とは経済産業省が提唱する「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」を現す概念です.
一方「就職基礎力」とは正式名称:若年者就職基礎能力修得支援事業として,事務・営業系に必要な就職基礎能力を,コミュニケーション能力,職業人意識,基礎学力(読み書き,計算・計数・数学的思考力,社会人常識),ビジネスマナー,資格取得(情報技術関係,経理・財務関係,語学力関係)の5領域に分け,基礎レベル(高校卒程度),応用レベル(大学卒程度)にそれぞれ水準化したものを元に,認定講座・試験を実施したものです.
これらの2つの基礎力が資格のような明確なPRポイントとなることはありませんが,就職活動における各フェーズ(ES,面接,GD等)において,企業が求めているものと重なる部分が多い.そのため,明確な就職活動の判断基準がない中では,基礎能力を意識して就職活動に臨むことが一つの効率的なアプローチとなります.なお,両基礎能力とも経産省および厚労省のWEBページに詳細が掲載されています.では,「社会人基礎力」について.「社会人基礎力」とは以下の3つの力とされています.
①前に踏み出す力(主体性,働きかけ力,実行力)
②考え抜く力(課題発見力,計画力,創造力)
③チームで働く力(発信力,傾聴力,状況把握力,規律性,ストレスコントロール力)
この3つを意識するとおのずとESや面接でのPRポイントが見えてくるでしょう.
『何を成し遂げたのか? どんな困難に対峙し乗り越えたのか?』
『目標に向かって想定された課題はなにか? どのようなアプローチをしたのか?』
『まわりの力をどのように活用したのか? 立場や考え方が違う中でどうまとめたのか?』
等,学生時代に頑張ったことや自己PRという,就職活動で必ず問われる事項に対して,非常に応用できるポイントであるため,こちらを意識した内容を組み立てるのが望ましいでしょう.次に「就職基礎能力」の解説をします.こちらは判断基準であると認識して貰えればわかりやすいです.「就職基礎能力」とは次ページの5つの力です.
①コミュニケーション能力
意思疎通:自己主張と傾聴のバランスを取りながら効果的に意思疎通ができる
協調性:双方の主張の調整を図り調和を図ることができる
自己表現力:状況にあった訴求力のあるプレゼンができる
②職業人意識
責任感・主体性:社会の一員として役割の自覚を持ち,物事に主体的に取り組むことができる
向上心・探求心(課題発見力):働くことへの関心や意欲を持ちながら進んで課題を見つけ,レベルアップを目指すことができる
職業意識・勤労観:職業や勤労に対する広範な見方・考え方を持ち,意欲や態度等で示すことができる
③ビジネスマナー
基本的なマナー:集団社会に必要な気持ちの良い受け答えやマナーの良い対応ができる
④基礎学力
読み書き:職務遂行に必要な文書知識を持っている
計算・数学的思考:職務遂行に必要な数学的な思考方法や知識を持っている
社会人常識:社会人として必要な常識を持っている
⑤資格取得
‐情報技術関係の資格 ‐経理・財務関係の資格 -語学関係の資格
以上のように,かなり細かく謳われています.正直すべての能力を兼ね備えた学生(社会人含めて)などまず存在しないだろうという突っ込みどころはありますが,企業や面接官はこのような判断基準を持っていると想定していただくと良いでしょう.基準は企業や面接官ごとに異なりますし,そもそも明確な基準などない場合も多いのですが,自分がどのような能力を持っているかを把握する上で非常に参考になる指標であるとともに,このような能力を兼ね備えておくと就職活動を有利に進められるという点では間違いありません.「社会人基礎力」&「就職基礎能力」を有効なツールとして積極的に活用しましょう!
3-1.就活の筆記試験(適性検査)で最も多く導入されている「SPI」を対策をしよう!
2013年1月 リクルートより「SPI3」がリリースされました.
SPIとはリクルートが提供している適性検査の名称で,就職市場での圧倒的なシェアを得て,新卒採用の代表的な試験として各企業で採用されています.外資や特殊な企業を受ける方以外は,筆記試験についてはこのSPI対策を実施しておけば間違いないでしょう.大学入試のセンター試験のように,適正検査項目を網羅的にカバーしているため,もし志望企業の筆記試験がSPIでなかったとしても,つぶしが利きます.これまでは「SPI2」が主流でしたが,2013年3月に「SPI3」へとバージョンアップが図られたため,今後は「SPI3」がスタンダードとなっていくでしょう.ちなみに「SPI2」から「SPI3」へ変更になった点は以下の通りです.
●性格適性検査の質問内容に「社会関係的側面」「組織適応性」の2つの分類が追加された
●テストセンターの性格適性検査は,テストセンター予約時にパソコンやスマートフォンから実施するように変更された
●インハウスCBTのみ能力適性検査が変更された.回答時間が30分→35分になり,電卓が使用可となった
このように「SPI3」は「SPI2」 のマイナーチェンジと言えます.そのため,対策としてはとにかく現在出版されている「SPI3」の対策本を7割程度の正答率が出るまで徹底的にやりこむことです.筆記試験はベースの学力と対策に費やした時間が反映されますので,大学3年生の夏頃までに一度試してみることをお勧めします.実際にやってみて,5割~6割の正答率でしたら直前の対策でも問題ありません.できれば3年生の夏休み中に一冊仕上げてしまって,常時7割程度の正答率が出せるようにしておくのが望ましいですが,3年生の冬休みに2週間程度真剣に対策本に向き合えば大丈夫でしょう.
しかし,3年生の夏に5割以下の正答率であるならば,対策を直ぐにはじめるべきです.特に非言語分野は小中高生時代の知識がベースとなっていますので,中学生や高校生の数学からやり直す必要が出てきて,7割を超えるまで相当の時間が必要になってくる場合があります.難関大学の方でも,推薦入試等で入学された方は非言語が苦手な場合が多々見受けられますし,それ以外の方も筆記での足きりを避けるために準備万端にしておくべきです.
以下に試験項目&内容を紹介しますが,一番効果的な対策は市販の対策本を実施することですので,ここではこのような試験内容であるということだけ確認いただければと思います.
※筆記試験新卒採用にて最も採用されている「SPI3-U」をベースに紹介.
①言語
・二語の関係(同意語関係・反意語関係のみ) ・語句の意味 ・二語の関係
・語句の用法 ・文の並び換え ・空欄補充 ・熟語の成り立ち
・文節の並び換え ・長文読解
②非言語
・計算/方程式/不等式 ・数的処理/推論 ・グラフ
・図形 ・図表 ・その他の数的処理 ・理科
③性格検査
ある意味もっとも頭を悩ませる検査になるでしょう.性格適性検査には「正直に答えてください」と書いてあります.とはいえ,努力家で真面目で思いやりがあり,困難にめげない強さを持っているリーダータイプであれば正直に答えれば良いでしょうが,自己中心的であったり,怠惰な性格であれば,それを正直に答えることが良い結果をもたらさないことは言うまでもありません.ただし,良く見せようとして回答すると矛盾を検出される機能が搭載されているようですので,類似質問に対してある程度回答が統一されているかを意識する必要があります.また,SPIが示した結果と面接の際の印象があまりにも違えば,不自然であるためチェック対象となり得ますので注意しましょう.最後に,受験形式を紹介します.
①テストセンター
全国主要都市にある専用のテスト会場を予約し,免許証や学生証で本人確認をして,PCで受験する方式
②WEBテスティングサービス
自宅のPCで受験する方式
③インハウスCBT
募集企業の社内のPCで受ける方式
④マークシート
問題冊子とマークシートで実施される方式
上記の4形式がありますので,志望企業がどの形式で試験を実施しているのか情報を入手し対策を実施しましょう.
3-2.就活の試験にプラス「英語」を課す企業が非常に増えている!
10年前と比べて最も変化が顕著であるのが英語の試験です.以前も商社や外資,自動車など英語の試験を課す企業は少なくありませんでしたが,2014年現在においては大企業のほとんどが英語を試験項目の一つとして課しています.実際には企業の現場で英語が必要である/利用するのは海外関連部署だけであるといったケースも多く,英語が必須スキルであることは多くはないのですが,実際には外資,外需,業種等で明確に区別できない様々な企業で英語が課されます.
この英語の試験は2通りありますので,先ず現状を整理しましょう.1つ目は「SPI」の英語を課す場合.多くの企業で実施されている形態です.企業にもよりますが「SPI」を活用するケースでは,英語力を足切りとして使うことが目的であることがほとんどです.その企業が求める最低限(企業によって求めるレベルは異なる)の英語力を有していることを判別するための判断基準であり,ある一定水準を超えていれば,英語力優劣で判別することはしません.つまり,一定レベル以上に達していれば,足切に合うことはありません.ただこの一定レベル以上というのが非常に曲者で,英語力を図る明確な指標は存在しないので,TOEICの点数を元に議論されることがほとんどです.TOEICの試験で600点以上の点数をコンスタントに叩き出せる英語力があれば,一般的な企業で足切に合うことはまずないと思っていただいて結構です.
※外資や総合商社等語学を重視する企業は除く.
ただしTOEIC600点というのは,英語をそれなりに頑張って学習してきた者にしか出せない点数ですので,問題はそれ以下の水準の学生がどうするのか? 500点前後~600点水準の学生のみなさんへの提案は,数撃てば当たる(志望先企業の求めるレベル水準次第であるが,通過する確率もそれなりにある)ので,英語試験に怯まず志望企業に果敢に挑戦しましょう.
問題は450点以下の水準の学生のみなさんです.いまあなたがこの文章を読んでいるタイミングが大学3年生の夏であればまだ間に合います.半年間あれば+200点も可能ですので,必死になって勉強しましょう.しかしながら,大学3年生の冬休み以降に英語力がない現実に直面した場合,以下の対策を提案します.
①「難関大学の学生の方」→リクルーター採用枠に片っ端からエントリー
②「難関大学以外の学生の方」→英語を課す企業にはエントリーしない
①につきましては,リクルーター採用では面接が重視される場合が多いため,英語力がなくとも通過できるチャンスが幾つもあります.リクルーター採用枠は難関大学に所属していることの最大の特典の一つですので,大学の就職課や先輩からの情報収集,みんなの就職活動日記等を活用し,リクルーター採用を実施している企業を見つけて,その中からエントリー企業リストを作成しましょう.
②のケースにつきましては,極端な話のように思われるかもしれませんが,可能性と時間の有効活用の観点から,英語を課す企業を避けることを勧めます.ほぼ確実に落とされる試験があることがわかりながら,その企業へのES作成および企業研究を実施する余裕があるでしょうか? それよりも,英語を課さない企業に注力することで,内々定を得られる確率が上がるはずです.筆記試験というのは点数が絶対値で出ますので,面接のような曖昧な基準で運と縁で突破できる可能性は限りなく低く「もしかしたらは」存在しません.ですから,可能性のある選択肢(英語を課さない企業)を選ぶべきでしょう.英語を課す企業が多くなったとはいえ,英語を重視しない企業も捜せば見つかりますので,そちらのリストアップを実施して,そちらに注力して対策を練りましょう.
いずれにせよ,「フラット化する社会」等で警鈴を鳴らされているように,現在のグローバル社会では英語が必須ツールとして求められつつありますので,時間のある学生時代のうちに英語力を向上させましょう!
4-1.就活で業界を絞るのは合理的ではない.幅広い視野を持とう!
学生がエントリーする企業は「就職希望企業人気ランキング」に掲載される企業をはじめとした一部の企業(200~300社程度)に集中すると言われています.大卒の就職希望者は約45万人いて,就職人気ランキング上位200社に入社する社員の数は約2万人です.チャレンジと割り切り,駄目元で複数社のみエントリーして,他のエントリーはいろいろな要素を検討して決めている とのことであれば戦略的ですが,ステータスや能力が足りておらず,エントリーを人気企業に集中させると全滅の確率が大ですので要注意です.また企業選びをする際に,業界を絞ってしまう学生が毎年多く見られます.その傾向を分析してみましょう.
①夢やヴィジョンが明確であり,選択する業界が自身の将来に結びついている
②なんとなくの憧れやイメージとして(私は自己分析を入念に実施したし,自身に適していると思い込む)
③業界を絞るように就職課や就職活動セミナーで指導された(業界を絞った方がより深く研究できるため)
結論から言えば,①のようにどうしてもその業界/企業しか行きたくない.他に内定が出ても入社することはない.という場合以外は業界を絞るべきではありません.①の場合も思い込みではないのか,冷静に自問自答を繰り返す必要はありますが.それでは,よくあるパターンの②と③を例になぜ非効率であるのかを解説します.先ずは②の事例から.
「自己分析をした結果,独創性や他人を巻き込む力が優れているので,私は広告業界に適していると思う.昔からキャッチコピーを創るのは得意だったし評判も良かった.クリエイターになるのは無理でも,新しいパブリッシングや広告宣伝の形を企画するような仕事がしたい.広告業界に絞って業界研究をして理想的には電通か博報堂,それが駄目でもできれば大手の広告代理店から内定を得たい…」
ここでは広告代理店を例に挙げましたが,マスコミ業界だけでなく,商社や金融,メーカーなど業界を問わず志望業界を絞り込む学生は多く見られます.ここでの問題は,
『自己分析は自身が志望している業界/企業/職種にまるで適しているような結果が出る傾向がある』
ということです.無意識のうちに,自分の適性を希望的観測で行なってしまうんですね.他者に分析してもらう以外に100%客観的な分析ができることはなく,自己分析の結果を信じてその業界を絞り込む結果となります.
また,③については業界を絞って研究&情報収集した方がより詳しい情報が得られるに決まっています.ただし,企業が重視しているのは,業界動向や自社の企業分析ではなく,あなたの能力,意欲,適性である.ということです.
大切なのは,自己分析から導き出される適性を100%信頼しないこと.そして,もう一つ重要な点は,業界や企業の仕事を一括りにすることなどできない.ということです.マスコミだからクリエイティブな仕事ができるのか? 商社だからグローバルな仕事ばかりなのか? 学生時代は得てして物事をイメージで捉えがちです.また,自分の都合の良いように解釈してしまうことが多々あります.ですから,自己分析で確認できた客観的なデータは明確にしつつ,自身の志望する職種を軸に,少しでも興味が持てる企業は未知の可能性があると期待して,幅広い業界/企業を選択肢に加えましょう!
4-2.日本の上場企業は2,300社以上.志望先企業の選択肢を増やそう!
日本にどれくらいの企業があるかご存知ですか?
経済産業省のデータによると420万社以上の企業が日本にはあるとのこと.これは個人事業主や零細企業も含みますので,みなさんが就職希望先として想定する企業に絞っていきましょう.同じく経産省のデータによると,資本金の額又は出資の総額が3億円を越え,常時使用する従業員の数が300人以上の大企業は12,000社存在しています.結構な企業数ではありませんか? 次に,より身近なデータとして,上場企業数のデータも見ていきましょう.
「東証第一部:1680社」「東証第二部:約430社」「東証マザーズ:約180社」※2013年1月時点
以上の企業が東証に上場しています.合計すると東証上場企業数は2,300社以上ということになります.
これらのデータを示して伝えたいことは,上場企業だけでも2,300社以上あるにも関わらず,なぜみな同じ企業ばかり志望するのでしょうか? ということです.倍率が数十倍~数百倍の人気企業以外にも,名が知られていないだけで優良企業は数多く存在します.それにも関わらず,ほとんどの学生が300社程度に志望企業を集中させるのです.いかに学生が盲目的になりがちであるかを表していると言えます.加えて,グローバル化や事業環境がめまぐるしく変化する昨今では,大企業が安泰とも限りません.ルネサスやシャープをはじめとする製造業の苦境を示すまでもないでしょう.
つまりは,みなが志望する人気企業以外にも優良,成長性のある企業は多数存在するので,希望する企業は広い選択肢から選ぶようにしましょう! 高倍率の企業ばかり受けるのは不毛です.志望企業選びが就職活動という戦の趨勢を左右するもっとも重要な要素といっても過言ではありません.こちらについては,以降の章で詳しく説明します.
4-3.就活対策において企業ホームページや会社紹介パンフレットはだけでは情報が不足している
業界分析・企業分析をする目的は何でしょう?
一つには志望企業を捜すためというのがあります.企業の事業領域や成長性,方針等,志望する企業を捜す/選ぶ段階での企業分析があります.ただ,学生の就職活動手順を見ていると,この企業選択のための企業分析というのは少ないように思います.予め志望する業界や企業が決まっており,エントリーする企業のES/面接対策のネタを得るために企業分析を実施する.つまりは志望動機を練るための分析がほとんどではないでしょうか.
前者のケース,つまり志望する企業を捜すための情報収集であれば,企業HPや会社紹介パンフレットも活用できるかもしれません.その企業の概要がわかりますし,パンフレットはその企業の宣伝媒体ですので,イメージが湧くように作られています.しかし,志望動機のネタとしての情報収集がこれらの媒体では,あまりにも心もとないと言わざるを得ません.
なぜならば,ESや面接の目的は大勢の学生の中から一定数を選抜することですので,学生はオリジナリティを表現しなくてはなりません.もちろんその独自性の方向が間違っていては元も子もありませんが,みなが閲覧/手にする情報を元に志望動機をPRして,差別化が計れるでしょうか? 要は同じ内容が記載されていては,選別できない.ということになります.選別できなければ,ステータス(大学名),スキル(資格やTOEIC),自己PRや学生時代に頑張ってきたこと等の他の項目で評価することになります.志望動機自体を評価する意義や価値についての疑問はありますが,志望動機を重視する企業が多く,差別化が図れる項目である以上,ここで独自性を発揮することが重要です.
前置きが長くなりましたが,差別化を図るべく,どこから情報を入手するべきか?
それは『日経テレコン』が素晴らしいツールであると紹介いたします.これは最強の情報検索・情報収集システムです.
「就活は日経で」とCMでも就職セミナーでもよく耳にします.ただ,日経新聞は記事一つ一つは参考になってもデータベースとしては機能しません.あくまで個別の情報に対する内容を確認することになります.その本来の目的を考えれば,新聞ですから当然と言えます.では日経テレコンはどう違うのか?
日経テレコンのHPでは以下のように紹介されています.
「新聞や雑誌などさまざまな媒体の記事データベースを横断的に検索し,過去に読んだ記事をピンポイントに探しだすのはもちろん,ビジネステーマ/企業/人物/地域など自由なキーワードで自在に情報収集ができます.」なんと控え目な宣伝でしょうか.
実際にその日経テレコンはどれぐらい凄いのか?
『日経テレコン』は,日本で発行されているあらゆる新聞記事をはじめ,日経ビジネス,週刊エコノミスト,週刊ダイヤモンド,週刊東洋経済等の雑誌記事,加えて帝国データバンク信用情報,みずほ総合,野村総合研究所等の調査・統計・マーケティングデータ等,社会経済に関係するありとあらゆる情報がDB化されており,その膨大なデータベースへアクセスすることが可能です.
志望する企業の名称を検索するとします.例えば「ソニー」と検索する.そうすると,販売動向から海外業績,CSR活動,リストラ実績,信用情報,社内権力闘争ネタなど,これまでにリリース&リークされたあらゆる情報が手に入ります.これらの情報を収集することで,自身の興味分野やアピールしたいスキル(例えばスペイン語が堪能であれば,南米の展開状況など)を組み合わせて志望動機を組み立てることなどが可能になるのです.
どうでしょう? なんて魅力的なツールなのだろう! と思いませんか?
この最強の情報収集ツールである『日経テレコン』はほとんどの大学で無料で利用することが可能です.大学の図書館で確認していただければ,利用端末や使い方等丁寧に教えてもらえるでしょう.せっかく高い学費を払っているのですから,積極的に活用し,差別化できる志望動機作成に役立てて下さい.
5-1.企業説明会参加&プレエントリーで自己満足していないか?就活対策が足りない
就職活動は何を基準にはじまりとするか? それは『選考の舞台に立つこと(ESを提出すること)が最初の一歩である』と申し上げましょう.
大学入学当初から目的意識を持ち,興味のある事柄にチャレンジをすることで,経験やスキルを磨く.そうすれば,ESや面接時に自己PRのネタとして活用できることでしょう.大学3年生になり,自己分析や企業分析を実施し,筆記試験対策も怠らない.このように計画的な取り組みを実施することが重要であることは言うに及びませんが,実際には準備万端で就職活動を迎えられる学生は少なく,次のようなケースの学生が多く見られます.
「大学3年生の夏から冬休み前に大学で実施される就職活動説明会に参加し,全体のスケジュール感や対策についての概要を把握する.就職課やマスコミは昨今の厳しい採用情勢を声高に叫んでいるので,10月~12月(年度にもよるが2012年度は12月)に企業の説明会が解禁されると,片っ端から企業説明会予約とプレエントリーを実施.その対象は,ネームバリューのある大手企業ばかり.自己分析や企業分析が十分でなく,絞りきれていないためだ.その結果,12月~3月までは企業説明会への参加でスケジュールが埋まり,ES提出や筆記試験対策等が疎かになってしまう.それでも,毎日企業説明会に参加しているのだから,自分は就職活動を頑張っているのだと思い込み,前進しているかのような気持ちになる」
これはフィクションではなく,毎年まったくこの通りのことを実施する学生が一定数います.少なくない数の学生がプレエントリーと企業説明会の参加に注力する事象が発生するのです.その結果,企業説明会の定員はすぐに埋まり,先着順や抽選に当たって説明会に参加できることになると,まるで選考を一つ突破したかのように喜ぶ.実際には選考レースではまったく前に進めていないにも関わらず.
企業説明会やプレエントリーが選考の条件になっている場合は別です.例えば,説明会でESを配布する企業や,説明会に参加していることをES提出の条件にする企業,また難関大学の学生については,説明会参加やプレエントリーをすることによって,リクルーターから連絡が来るケースもあります.しかしほとんどの企業では,説明会とプレエントリーは学生を集客するための宣伝フェーズであると位置づけています.つまり,採用側からしてみれば,プレエントリーをいくらされようが,説明会に何度参加して貰おうが,選考の対象にはなっていないということです.
ではいったい,就職活動を一歩進めるためには何をしなければならないのでしょう?
それは志望企業に正式にエントリーをすることです.つまり「ESを提出すること」 .これではじめて選考に参加したことになります.企業によってはESより先に筆記試験が1次選考となる場合もあるでしょうが,どちらにしても,ESを提出しないことにはなにもはじまりません.就職活動のの第一ステップはESを提出することです.
大学受験には志望校を受けるごとに試験代がかかりますが,企業へのエントリーには一銭もかかりません.そして,時間と期間の制約はありますが,自分の頑張り次第でいくつでもエントリーが可能です.そのため私は(講師として参加する)大学の就職説明会で口を酸っぱくして次のことを学生に伝えています.
「(企業説明会に参加する時間があったら)一つでも多くのエントリーシートを仕上げて提出しましょう!」
もちろん,エントリーする企業にはプレエントリーしておいた方が良いですし,企業説明会に参加することが無駄だとは言いません.ただ,企業のHPや採用パンフレットに記載されている内容を繰り返したり,宣伝がほとんどである企業説明会にいくつも参加して,他にすべきことが疎かになっていませんか? 前章にて紹介した『日経テレコン』の方がずっと使える情報源を手に入れられることも多々あります.
そのため「プレエントリーや企業説明会は単なる情報収集であり,企業選考のレースへの参加券ではない」 ということを認識して,説明会参加はほどほどに,一枚でも多くのエントリーシートを作成し提出しましょう!
5-2.就活においては戦略的な企業選び(エントリー)が結果を大きく左右する!
日経就職ナビの2013年度学生モニター調査によると,学生1人当たりの平均エントリー数は89.1社,ES提出は23.6社とのことです.前項でESを提出しなければプレエントリーは無意味だと解説しましたので,実際に選考を受けた企業の平均が約24社ということになります.
この数字を見てどのように思いますか? 私は以下のように提案します.
『全然少ないです.足りません.もっと増やしましょう! 50社以上のES提出を目指しましょう!』
ステータス&スキルが備わっており,文章力やプレゼン力に自信がある学生であれば,エントリー先を問わず,24社のエントリーのいずれかで内々定が出る可能性は高いでしょう.ただし,これは例えるならば,早慶レヴェル以上の大学で,上位1割~2割に属している方です.MARCHであれば,上位5%程度でしょうか.エントリー先のすべてが人気企業200社であった場合,それぐらいの学生でなければ全滅の可能性が大いにあり得ます.
もちろん,100名が100名とも全滅ということではありません.こればかりは個々の運と縁の要素も大きいので,定量的に算出するのは非常に難しいのですが,それなりのスペックの100人の学生(例えばMARCH/関関同立の学生でTOEIC600点)が,人気企業200社に25社エントリーしたとすると,「半分~3/4」くらいの学生が全滅することでしょう.決して誇張ではなく,かなりこれに近い結果が出ると断言します.何故こんな数字になると言い切れるのか?
なぜなら,『倍率100倍の企業を25社受けても内定の確率は4分の1ではない』からです.
多くの学生は倍率を勘違いしています.例えば選考がくじ引きであり,1~100の数字を選ぶくじを100回試せば1回当たることになるでしょうか? いいえ,違います.毎回100分の1の確率です.常に次の事象は過去と独立しています.とはいえ,くじ引きであれば100回引けば1度当たる人が大半でしょうし,100人が25回引けば25人くらい当たりを引くでしょう.
実は採用選考も似た部分があり,かつ別の要素が加わることで複雑な確率となるため,採用倍率の数字は額面通りに受け取ることはできません. 倍率100倍の企業へ25社,任意に抽出した400名がエントリーするとどのような結果となるか?
理論上は100名の内定者が出るはずですね.しかし結果は,1割~2割が複数社の内定を得て,一つも内定を得られない,つまりは全滅する学生が3/4以上発生します.そして,この優秀な(企業が優秀だと判断した)学生が,他企業も含め内々定(当たり)を独占するのです. これは大変重要なことですので,もう一つ具体的な例を示しましょう.
グローバルな仕事と金融業界に興味があり次の25社にエントリーするとします.
「総合商社5社,自動車5社,海運2社,銀行3社,損保3社,生保3社,他4社「ソニー,キヤノン,ジェトロ,ネスレ」
MARCHの平均的な学生が100人,このエントリーで就職活動に向かえば90人以上全滅です.何故なら,自身の大学の上位5%と,より上位校の優秀な学生が内定を得てしまうからです.つまり,特定の人間が複数の内定を手に入れる結果が出ます.内定ホルダーと呼ばれる複数内定保持者と,内定0の難民が発生する所以です.
このエントリー企業25社は少々極端な例ですが,現実にこれと似たようなことを多くの学生が実施していることに気づいていません.25社のエントリー先のうち,5社が先ほど挙げた企業,15社が人気企業200社に入っている企業,それ以外の5社が滑り止めにとリストアップした企業.というのが珍しくもなんともないのです.この場合も20社の内定の確率は低く,滑り止めと思っていた企業の選考を勝ち進めるかが勝負となる可能性が大きくなります.
現実を認識し,危機感を持っていただくためにつらつらと前置きが長くなりましたが,では実際にどうするのか? その戦略について紹介していきましょう.このフェーズで実施するべきことは,『戦略的な企業選び(エントリー企業リストの作成)』になります.
『Ⅱ.自己分析』の章で紹介しましたが,まずは自身のステータス&ポジショニングをできるだけ客観的に把握しましょう.正しい就職活動の「相場観」を持ち,志望企業を適切に選ぶことが重要となります.はっきり言えば「とりあえず系」と「憧れ系」のエントリーは見直すべきです.現実というのは非常に残酷であり「無理かもしれない.でも,もしかしたら受かるかもしれない」ということはまず起こらないからです.幸運に恵まれない限り.
もしあなたが難関大学の学生でなければ,人気200社からの内定を得ることはまず不可能です.もしかしたら,自分の大学から1名内定が出るかもしれませんが,それぐらいの確率でしょう.そんな確率の企業をエントリーしますか? そんな確率の企業を複数社エントリーしますか? 難関大学や駅弁大学でも,上位に属していなければ(能力がなければ)大半は全滅という結果となります.
情勢を冷静に分析し,戦略的に企業を選びエントリー企業リストを作成していくことが成功への一歩となります.逆に言えば,学生のエントリーは人気企業に偏る傾向がありますので,それ以外の企業を中心に自身の興味や希望する職種,働き方に合いそうな企業をリサーチしましょう.きっとお気に入りの企業が見つかるはずです.前章で示した通り上場企業だけで2,300社以上あるのです.なにもネームバリューのある企業だけが大手企業ではありません.優良でそれほど倍率が高くない(学生が見落としている)企業は結構あります.私が知る限りでも,ネームバリューがあっても労働環境や待遇がいまいちな企業は少なくありません.であれば,是非働きたいと思える企業を探すのは宝探しよりもずっと生産的ではないでしょうか? 正しい就職活動の「相場観」を持ち,志望企業を適切に選びましょう!
企業説明会
5-3.就活においてもっとも重要なことの一つはエントリー企業リストを作成すること!
前項で『戦略的な企業選び』の重要性を説明しましたが,実際に選んだ後にすべきことは,『エントリー企業リストの作成』と『リストを増やす(ES提出先を増やす)』ことです.志望する企業を書き出して,リスト化しなくてはなりません.エントリー企業を志望する順番に並べてると良いでしょう.俄然やる気が湧き上がってくるはずです.そして,そのリストにじっくりと向き合ってください.業界,職種,勤務地等,自身が希望するものと合っていますか? イメージやネームバリューだけで選んでいないか今一度確認してみましょう.やみくもにエントリーして整理できないままでいると混乱するだけですので,リスト化してどの企業を受けるのか一覧化して明確にしておきます.
次に志望企業のES提出時期を確認します.「みんなの就職日記」等で選考スケジュールが掲載されているはずですので参考にしてください. ES提出時期/期間を確認し,スケジュール帳に記載しておきます.併せて,筆記試験&面接の日程も確認しましょう.これらの作業を実施して,スケジュール帳に落とし込むことでES提出漏れが防げて,繁忙時期が見えてくるはずです.ESの提出時期が重なるのは就職活動の仕組みから仕方がありませんが,面接の時期は多少異なってくると思います.次項で説明しますが,スケジュールの空きがあれば志望企業を増やすことをお勧めします.いずれにせよ,全体感を持って望むことで,少しでも余裕を持って対策を実施していきましょう.
先ほど学生の平均ES提出数が23.6社であるとのデータを紹介しました.
あなたのエントリー企業リストが,自身のステータス/ポジショニングに対して控え目に(分析は難しいですが)作成されているのであれば,この約24社という数字は特別少ない数であるとは言えません.しかし,冷静に志望企業リストを作成することはなかなかできません.きっと行けたらいいなと思っている企業が入っていることでしょう.その企業に対して,無理だの変えろだの述べるつもりはありませんが,いま一度リストを客観的に見てみましょう.
世の中希望通りにコトが進まないのが常ではないでしょうか? どんなに強く望んだところで,努力を重ねたところで,落ちるときは落ちます.特に採用は明確な基準がなく,運や縁の要素も大きいので努力が結果に比例するわけでもありません.とするならば,最悪の事態も想定し,計画/行動するべきではないでしょうか?つまり,志望企業リストを拡充するのです.先輩方から一番困ったこと/怖かったことは何かと経験談を聴くと,苦労した人ほど次の回答が出てくると思います.
「一番怖ろしいのはいわゆる「持ち駒」がなくなる状態である」
この事態を就職活動の中後半で招かないようにするために,就職活動初期の段階でESを提出する企業を増やして,余裕を持っておくことが重要です.はっきり言って,ES提出24社というのは少ないと言わざるを得ません.ESで半分落とされて,1次面接で半分,2次面接で半分落ちたら,最終面接に臨めるのは3社だけになります.3社に人生を賭けますか?
ESの提出に制限はありません.自分さえ努力すれば,いくらでもESは提出が可能です.ここが頑張りどころでしょう.もちろん手抜きのエントリーシートなど言語道断ですが,ESで記載する項目は似通っているものが多く,一度しっかりとしたものが書けてそれが通過すれば,他企業でも大体通じるものです.そのために,納得のいくESをしっかり仕上げること.そして,そのESをベースにたくさんの企業へ提出すること.これが非常に重要であると重ねてお伝えします.自己分析結果および戦略的な企業選びを今一度振り返り,志望企業リストの拡充し,たくさんESを提出しましょう! 志望する企業から是非内定を勝ち取るべく,熱意と努力を忘れないでください.
6-1.エントリーシートは初期選考段階だけでなく,最終面接まで重要な材料となる!
ESは選考の第一段階から,最終面接まで利用される重要なものです.そして記載した内容は証跡として残ります.そのため,とにもかくにも大切なことは,『ESに嘘を書くな!』ということです.面接では話を多少誇張するのはOKでも,ESの虚偽は絶対にNGです.この点は覚えておいてください.
そして,ES対策のコツは? とよく質問を受けます.制限文字数の中でポイントを的確かつ具体的に記す抽出力や,論理的な構成力,ひいては文章のストーリー性など,コンテンツだけでなく文章力/作文力が問われますので,一朝一夕には上手なESは記せません.そのため,ES対策本や論文の書き方等,専門書籍の中から数冊,評判の良いものを読み込み,何枚も何枚もESを作成することが上達の近道です.教授や就職課の職員に添削をお願いするなど,信頼のおける第3者からのチェックも非常に有効となりますので,積極的に実施しましょう.
とはいえ,切羽詰った方にこんな正論を振りかざすつもりはありません.本項ではESの効率的な対策方法をレクチャーします.文章のテクニック/キーポイント(具体性,自主性,定量性,ストーリー性を意識することなど)は優良なES対策本を本サイトでも紹介しておりますので,そちらを参照ください.また,ES添削やES代行作成も承りますので,よろしければそちらもご活用ください.
手っ取り早いES対策は,自己分析で洗い出した自身のエピソードを,優れたESに上書きすることです.つまりは,合格した実例をベースに自身のESに作り替えてしまうわけです.人に誇れる経験やスキルがあったとしても,それを訴えかける作文能力がなければES通過は困難になるでしょう.文章力や論理構成などは短い期間で習得するのは難しい.とするならば,見本に倣えば良いのです.具体的には内定者が実際に提出し通過したES実例集が出版されていますので,その中から自分に近いものを抽出して,そこに上書きしていくのです.ただし,単純なコピペではどこかで見た内容になりますし,後でばれた際にやっかいなことにもなりかねません.そのため,コピペを活用しながらオリジナリティを表現する.これがもっとも効率的な対策の一つですので,時間がない方やESが通らない方は試してみることをお勧めします.そして,とにかく枚数をたくさん書きましょう.書くことで改善すべき点が見つかり,書く度により良いESになっていくはずです.
次にESに記載する内容(コンテンツ)を何にするか? ほぼすべてのESで問われる学生時代に頑張ったことについて提言します.千数百のESを読み,面接の選考官をしてきた経験から言えることは,「ルーティンワークを書くな!」
ということです.この点は重要なポイントである割に見落とされがちですので詳しく説明します.
「ルーティンワーク」とはあらかじめ決められた段取りや流れに沿ってこなせば,誰にでもできてしまう仕事を指します.こう言い換えても良いでしょう.「創意工夫やカイゼンを求められないマニュアルに沿った仕事」これに該当するのは例えば,飲食店スタッフ,コンビニスタッフが挙げられます.
結構な数の学生がこのエピソードをESに記載し,面接でPRします.何故これらの仕事がコンテンツとして向かないのか? なぜなら,飲食店やコンビニの店長がバイトに求めるのはマニュアルに沿った効率的な労働であり,アルバイトが限られた権限の中で工夫できる余地は少ない からです.飲食店/コンビニでの接客の工夫はPOP作成,CS向上による売り上げ拡大など,具体的なようで内容が薄い場合がほとんどです.
そのため,店長として店舗運営した経験や,個人店舗の立ち上げなどの経験があれば別ですが,それ以外は,この取り組みを本題にするのは避けるべきでしょう.この2つの経験談が多いため例えとして出しましたが,他にも「ルーティンワーク」を大げさにPRして自己満足する学生が多いので気をつけましょう.問われているのは,「発想力,実行力」や「具体性,自主性,定量性,ストーリー性」ですので,可能な限りこれらの点をアピールできる取り組みを選択するようにしましょう!
6-2.エントリーシートは早く提出すること! スケジュール管理を徹底して締切に先行すること!
大手企業や人気企業においては,ESを選考の第1フェーズの足切りとして査読するケースが多いです.つまり,優れているESを選び出す作業ではなく,及第点を与えられないESを間引いていく作業です.つまり,大量に届くESから出来の悪い(表現は悪くなりますが,質が悪い,読むに値しない,面接の稼動をかけるに値しない)ものをいかに排除していくかが,採用担当者の仕事になります.そのため,相対的に他の学生よりも優れているESが作成できれば,際立って素晴らしい内容でなくても通過する確率は高くなります.
例えば,人気企業では,数千~数万のESが届きますので,効率よく捌いていく必要があり,企業によっては採用担当者がすべてのESをチェックすることすらしないケースもあります.パラメーターを設定したシステムで自動選別したり,外注先に委託することも珍しくありません.企業によっては,学歴フィルターの一環としてESを活用することにより,ターゲット校以外の学生は一律落とすというようなことも実施しています.しかし,これはそのような仕組みになっているというシステムの問題で,本質的な論点ではありませんので割愛します.
では落とされないESの要素はなにか? 一言でいうと一読して印象に残るか否かです.相手に訴えかけるESの作成方法の一つが前項で示した対策ですので,上手く活用しつつ,以下の点についても基本的なことですが意識してください.
第一に,問われている内容についてアンサーミートしているか? という点です.面接でもよくあるケースですが,質問に対しての答えになっていないことが実に多い.内容の優劣ではなく,そもそも聞いていることに対してピントがずれた回答をしている.そんな馬鹿なと笑ってしまいそうですが,例を見てみましょう.
学生時代に頑張ったことは何か? との質問に対し,アルバイト先でのお客さんとの馴れ初めや,サークル旅行の思い出話,留学時のホームスティ先の家族の話等々,問われている事項から話が逸れて,付属的な内容がメインになっているケースは枚挙に暇がありません.思い当たる節がありませんか? 限られた字数で問われていることについて的確に解答する.何をどのように相手に訴えかけるべきかを整理する.基本ではありますが,質問事項への確実なアンサーミートを常に心がけて骨子を整理して記載しましょう.
次の留意点は,文字数制限に合わせているか? です.400字や800時で記載と規定されているにも関わらず,文字数が6割以下で記載する事例が相当します.「量より質」というポリシーや,ひと言でユニークさをPRしたい等,それぞれに考えはあるかもしれませんが,そのようなこだわりはESに関しては優位な差別化になりません.「手書きで自由に」とか「個性を発揮して」という要求がそのESに求められていれば話は別ですが,400字の要求がされていたならば,300字以上で記すことなど,要求事項を満たす文章量を記すことが必要不可欠です.先ほども説明しましたが,ESは加点して高得点の学生を捜す作業ではなく,減点して要求水準に満たない学生を落としていく作業です.ポリシーや個性をPRしたいのであれば,ES通過後の面接等で勝負すれば良い.文字数自動チェックにより,半分以下のものは一律落とすこともあり得ますので,無意味なところで勝負せず,基本に要求に忠実に記載しましょう.
最後の留意点であり,見落とされやすいポイントは,ESをできるだけ早く提出せよ! ということです.ESには通常2週間~2・3ヶ月程度の提出期間が設けられています.準備不足や,より良いものを提出したいとの心理から,学生はESの提出を期限ぎりぎりにしてしまいがちです.はっきり言いましょう.締め切り間近に提出したESは読まれない可能性すらあります.せっかくの力作を完成させても,選考してもらえないとしたら,徒労以外のなにものでもありません.
何故,締め切り間近のESは駄目なのか?
これは企業のESチェックのフローから説明できます.企業はESを早期提出者から順番にチェックをしていく場合がほとんどです.提出期間が短い場合は,すべてのES提出を待って一斉にチェックする方法となり得ますが,提出期間が長い場合は,
到着した順番に選別をしていく.これは当然といえば当然で,企業からしてみれば膨大な数のESが届くため,来た順番にチェックをしていかなければ間に合わないためです.そのため早期にESを提出することが優位となるのです.
先ず,早期にESを提出してくる学生は,志望度が高い可能性が大 という判断ができます.ESの設問には志望動機の要求がほぼ間違いなくありますので,それを設問が与えられた時点で答えられることは,自社に予め興味を持って準備をしてきたのだろう,と想定できるからです.早々に提出してくる意欲からも志望度の高さが伺えるでしょう.
また,期間に余裕があるにも関わらず早期に提出してくるということは,物事を計画的にかつ前倒しで進められる能力があると判断することもできます.就職活動ではES,筆記試験,面接と課題は明確になっており,それに対して準備をしっかりしてきているという点で評価できます.もちろん,中身が伴っていないESを出しても通過するはずもありませんが,ES提出は早ければ早いだけ優位になる可能性があるため,できるだけ早く提出するようにしましょう!
補足ですが,ターゲット校のリクルーター制を取っている企業では,早期のES提出者や説明会参加者,OBOG訪問者の中から先行して面接(リク面談)を実施する企業も多くありますので,「時は金なり」の格言を意識し,周囲よりも早く動くことを意識しましょう.
エントリーシートのコツ
6-3.エントリーシート(写真)は第一印象に繋がる重要な書類.丁寧に記そう!
これまで説明してきた通り,ESは選考の第一段階から,最終面接まで利用される重要なものですので,自筆で記載するものは丁寧な記述を心がけましょう.そして, ESに貼り付ける写真についても最大限の配慮をすべきです.面接は第一印象で8割決まるといった情報もあります.8割の真偽は議論の余地がありますが,容姿の優劣(特に女性)は採用に驚くほど影響を与えます.
ESの写真も同様に採用担当者の判断に影響を与える可能性が高いです.容姿を変えることはできませんが,良く見せることはできます.清潔感はもちろんのこと,身だしなみや雰囲気も写真から伝わってくるものです.最近はデジタル写真が主流となっておりますので,修正等も可能です.あまりにも実物と違うような修正はいただけませんが,スピード写真で写すのと,写真館でプロに写して貰うのでは出来は大きく違ってきます.一度お気に入りの写真が出来れば,それを複製するのは非常に簡単ですので,是非納得のいく写真を取り,ESで好印象を得てスタートを切りましょう.
7-1.就活では面接やGDの形式を確認して具体的な対策を講じよう!
採用選考の最大の関門である面接及びGD.ここを突破せずして内々定は掴めません.求められることを明確にし,準備と対策に取り組みましょう.主な選考形式は ①集団面接 ②グループディスカッション/グループワーク ③個別面接 の3つですので,それぞれの選考の内容と具体的な対策についてレクチャーします.
①集団面接
選考官1・2人に対して,学生がn人である面接形式です.実際には学生は3人~5人である場合が多く,選考の初期に実施されるケースがほとんどです.企業が集団面接を実施する目的は,時間の効率活用であり,一人一人の学生を面接する余裕がないので一括でチェックしてしまいましょう というスタンスで企業は設定しています.では,集団面接ならではのポイントは何か? 以下の3点を意識してください.
「質問に的確に答えること」「与えられた時間内で回答すること」「傾聴の姿勢で臨むこと」
もちろん個別面接でも重要なことですが,特に集団面接では,短時間で効率的に選抜をしたいという採用側の意図を汲むことが重要です.特に「他者の話に耳を傾けているか」という点は集団面接ならではですので,視線や態度,姿勢等にも注意しましょう.いずれにせよ,質問に答える時間や面接官とのコミュニケーションの時間は少ししか与えられませんので,質問に対する的確なアンサーミートと,自身が伝えたいことを端的にPRすることが大切です.
また,集団面接は,企業説明会やOBOGとの懇談会という形をとって実施される場合もありますので,この点にも留意が必要です.具体的なケースとしては,説明会や懇親会と見せかけて,学生を少数のグループにして各グループに社員を配置し,学生時代の取り組みや志望動機等のヒアリングを実施する形態は選考だと思っていただいてまず間違いはありません.選考だと気づかずに説明会のスタンスで参加する学生が少なからずいますので,覚えておいてください.この場合もポイントは同様ですが,単にヒアリングの姿勢ではなくて,話し手となり可能な限り印象を強く残すスタンスが重要です.それでも学生時代の取り組みや志望動機を話す時間が与えられない場合は,「相手に気持ち良く話しをさせてあげる」ことで評価されやすい傾向がある.ということを意識しておくと良いでしょう.
いわゆる「人は自分の話を聞いてくれる人が好きである」理論です.
そのため,上手に相手(選考官)に話をさせてあげると評価が高くなり易くなります.そして,不慣れな選考官ほど往々にして本人がしゃべります.特にグループヒアリングでは学生一人一人に話を詳しく聞く時間が取れないため,自身が話したい(自慢したい)と思っている内容について,的確な質問をしたり,好意的なリアクションをされると,
その相手が優秀である/一緒に働きたいという評価を下す傾向が強いです.
このタイプの選考官は結構な割合で存在し,かつ少し話すだけで判別できる場合が多いので,是非この点を意識しましょう.具体的な聞き上手スキルについては,「D・カーネギー著 人を動かす」をはじめ,いろいろな専門書が出ていますので,そちらを参考にしてください.
②グループディスカッション/グループワーク
学生を一定数(4人~8人程度)にグループ分けし,課題/テーマを与えて,それに対する取り組み姿勢や成果を評価する形式の選考です.面接だけでは確認ができない「対人調整力」と「個人能力」を確認する目的があり,選考フローの初期段階で積極的に取り入れられています.地頭の良さや性格が面接とは違った観点から見えるため,ごまかしが効きにくい選考といえるでしょう.問題解決力とも表現されますが,議論を前進させる推進力,課題を明確にして解決策を提示できること等が評価ポイントになります.
対策としては,自身がやり易い/自身に適した役割を見つけることが重要です.構成メンバーや題目に影響を受ける部分が大きいため,リーダー役やサポーター役が良い等は一概には言えません.とにかく議論を生産的に前に進めることを心がけ,自身ができる役割でアプローチしましょう.どの役割を担うかですべきことは変わってきますが,少なくとも以下のポイントは忘れずに抑えておいてください.
●タイムマネジメント:限られた時間の中で時間配分を適切にすること
●ネガティブ発言はしないこと:駄目/無能な人間に対してもあからさまな否定の態度を取らず,コントロールすること.イメージ,感情による批判をしないこと.
●ゴール/目標を明確に:常にゴールを意識して,その議論の落としどころはどこであるのか?を考慮すること.地に足のついた論拠を持つよう心がけること.
●細部に持論にこだわり過ぎないように:細部の議論にこだわり過ぎて議論が逸れたり,停滞することがないようにすること.自分の視点/意見に固執しすぎないこと.
上記は最低限気をつけるべきことで,大切なのは自分の意見/立場を明確に示しつつ,相手の意見を尊重する姿勢を示すことです.常に自身が議題&チームに対しどんな貢献ができるかを意識して,活発な議論を展開しましょう! また経験値による優劣も大きくなりますので,GDの経験が少ない方はケーススタディや論理的思考の本を読み込んでおくことをお勧めします.③の個別面接対策は次項に詳細に記します.
7-2.就活面接で問われる質問は3つ.要点を確実に押さえておこう!
就職活動の最大のハードルである個人面接.学生は面接をフィーリングと勘違いしてしまう傾向があります.実際その場の勢いで面接に臨んでくる学生が実に多い.しかしながら,面接は事前準備が結果を大きく左右すると断言します.なぜなら,問われる質問がある程度決まっているからです.質問が想定されるのであれば,問いに対する回答を準備することができます.思いつきで回答をするより,時間をかけて検討を重ねた回答の方が質が良くなることに異論はないでしょう.
そのため,面接で問われる確率の高い質問を中心に対策方法をレクチャーしていきます.また,よく面接の必勝法として,「結論を先に述べてから理由を後付けする」等が紹介されますが,結論が先だろうと後だろうと,質問に的確にアンサーミートしていれば問題ないと私は考えます.なぜなら,この結論先行型の回答は場合によっては不自然になりかねないからです.だらだらと要点を得ずに話すのはいけませんが,相手に訴えかけたい内容が適切に構成されていれば,結論先行はそれほど気にする必要はありませんので,型にはまってしまわぬよう,自分のメッセージが最大限相手に伝わる方法を模索してください.
①自己紹介
面接は選考官によって進め方(コミュニケーション型,質疑応答型,議論型等)が千差万別ですが,それでも初めて会って最初に問うことは「自己紹介」です.面接前に履歴書やESを見ている場合は多いですが,そんな紙に書かれた情報ではなく,実際に会ってあなたがどんな人間であるのかを確認するのが面接ですから,最初のアクションとして面接官はこう聞いてくるのです.「では最初に自己紹介をお願いできますでしょうか?」と.
採用の最前線にいた時に一番の違和感を覚えたのは面接の導入部分であるこの自己紹介の回答です.
「●●大学法学部の鈴木です.私の強みは…/自己PRは…」
自己紹介をお願いしているにも関わらず,突然PRし始める学生が少なからずいます.ここまで酷くなくても,大学,学部,ゼミ,サークルを紹介した後に自己PRをはじめる学生は実に多い.初めて会った人間に対して冒頭から自己PRをするのは不自然ではないでしょうか? あなたは自己紹介してと問われたら自分を売り込むのですか?
このような流れではじまると,コミュニケーション能力や対人対応力が低いと判断されてしまいかねません.先ずすべきは,相手の好奇心に対してあなたを知って貰うことであり,できるだけ好意的な第一印象を残すことです.あなたの全体像を見せて,どこに興味を持って貰えるかを最初に確認するのが望ましい.そのための自己紹介の要点を以下にまとめます.
●学部,専攻,ゼミ +学生時代に取り組んだことを総花的に述べる +簡潔な志望動機を述べる
-雰囲気や態度,視線,喋り方,声のボリュームに気をつける.
(ある程度の声の抑揚があった方が聴き易い.多少の身振り手振りは全然OK).
-簡潔で分かりやすく,落ち着いて,ゆっくりと,そしてはっきりと話すことが大切.
-あまりたくさんのことを長く喋らず,トピックスを紹介する.
-出身,趣味など簡単に加えると話が広がる可能性がある.
-自己紹介の内容から,次の質問が繰り出される可能性大なので,そのことも計算に入れて話す.
上記のポイントを意識して,1分,3分,5分の自己紹介を用意しておくことが重要です.面接官が時間指定する場合もありますし「簡潔に自己紹介をお願いします」と問われたら雰囲気を読みつつ3分程度が適切でしょう.
とにもかくにも,自己紹介で相手に好印象を与え興味を持って貰えれば,その後の面接がずっとやり易くなります.第一印象が重要というのは,初見の見た目だけでなく,会って話し始めてからの一定の時間を指すとも言われます.面接の前に世間話を振ってこられたら,それにユニークに/ウィットに富んで対応するべきですし,空気を読むとは相手の求めていることを察して,応じることです.面接の出だしから自身のペースに持っていけるよう自己紹介は最高のものを用意しましょう!
②自己PR/学生時代に頑張ったこと
次に自己PR及び学生時代に頑張ったことです.個人的には「自己PRしてください」という問いは不自然であるのでしませんが,面接ではこのように問われることが多々あります.どちらにせよ,この問いに対する回答は学生時代に頑張ったことであり,その経験を通じて学んだ/得たこと(長所・スキル)です.アルバイト,サークル,ゼミ,留学が学生時代に頑張ったこととして語られることの多い取り組みですが,求めているのはあなたの思い出話ではないことを常に意識しましょう.
その取り組みを通じて得た経験や,あなたの個性/能力を確認したいと考えているのです.そこを理解して,どのような内容やエピソード,話題構成が相手に伝わりやすいかを検討しましょう.要点を次にまとめます
●学生時代に頑張ったことから自己PRを構成する
-キッカケ,動機,背景を整理する.
(何を考えてその取り組みを実施したのか? 留学であれば,何故その都市,大学に決めたのか等)
-目標,実現したかったことを整理する.
(ゴールや仮説を明確にする.留学であれば,語学力+αの計画していたこと)
-取り組み内容&アプローチ方法を整理.
(どのような役割で,どうアプローチしたのか? どんな工夫を凝らしたのか?)
-成果(達成したこと,実現したこと)を明確にする.
(自身が実現したこと,成長したことはなにか? Before&Afterでどのように変わったのか?)
※どんなことに情熱を注ぎ,どんな目標を立ててどんな工夫をしたかが語れると良い
※自身の魅力と長所を全力でPRして,一緒に働きたい人材と思わせる!
※どんな内容をどんな風に語るかで,頭の回転力やかしこさが判断される
③志望動機
企業が採用をする際に志望動機を重視する合理性はあまりないように思いませんか? 適性があり,能力があって意欲が確認できれば動機が金だろうがブランドだろうが夢だろうが,判断基準に組み込むのはあまり意義があるとは思えません.企業や選考官によっては恣意的な判断を挟まないよう,志望動機を重視しない理知的な選考体制を持つところもありますが,大抵の企業では志望動機を問い,選考官によってはこの志望動機を重要視します.そして,この志望動機が就職活動においては一番工夫がしやすい項目であると言えます.
なぜならば,学生時代に頑張ったことや自己PRというのは,あなたが学生時代に,もっと言えば約20年間でどんな生き方や努力をしてきたかという蓄積(ストック)問うものであり,直前の対策で体裁は繕えても本質的な部分はごまかしようがありません.それを良く見せるのがテクニックであり,それが通じる部分も大いにあるのですが,志望動機はあなたの考え方とビジョンを問うものですので,逆転がしやすいテーマです.
つまり,学生時代頑張ったこと/自己PRがこれまでの積み上げを語るスピーチであるのに対し,志望動機はあなたのその現在の思考や能力を問うディスカッションであると言えるのです.あなたが志望動機を語る.それに対して選考官が質問をする.考え方を聴く.つまり言葉のキャッチボールになる.論理的思考力や発想力,コミュニケーション能力を発揮する場となり得ます.とするならば面接の戦略もおのずと決まってきます.
あなたが人に誇れる/熱く語りたい成功や努力,経験があるならば,学生時代頑張ったこと/自己PRに注力して,そちらに選考の時間と注意を向けるように尽力するべきですし,その逆で学生時代は無為に過ごしてしまったとしても,自身のコミュニケーション/ディスカッション能力で勝負したいのであれば,なるべく志望動機に時間を割いて貰えるよう上手く誘導するべきでしょう.
また,本命企業の志望動機以外はチープな内容しか語れない学生があまりにも多いですので,志望動機も大きなウェイトを占める場合が往々にしてある(それが果たして有意義かはさておき)ことを認識して,以下の項目をしっかりと整理することで自身の考え方の軸を持ち,相手と議論できる体制で臨みましょう.
●志望動機を明確にし相手との活発な議論を目指す
-何故○○株式会社を希望しているのか?志望理由を明確にする.
(興味を持ったキッカケ,自分が抱いているイメージ,自身の価値観,事業領域の可能性 等)
-志望する会社で何がしたいのか?
(現状の課題意識,長期的なビジョン,具体的なターゲット(法人/個人,大企業/中小企業)
ドメイン(若者/高齢者,富裕層/低収入層 等),分野(生活,教育,環境 等)
技術(IT,テクノロジー,金融 等)
-希望職種と具体的にやってみたい仕事のイメージを持つ.
(自分がどのようなアプローチができるのか?どのような貢献ができるのか?)
※学生時代に頑張ったことと絡めて,どんな働きができるかを述べる
※なぜそれをやりたいのか,仕事を通して何を実現したいのかというヴィジョン
※入社意欲の強さ,仕事に対する意識の高さ,情熱等
※きちんと情報を集め,企業分析し,当社の業務内容を把握しているか?
※職種を答えるだけでなく,具体的にどんなことをしたいかを述べること
以上の「自己紹介」「学生時代に頑張ったこと/自己PR」「志望動機」が面接での必須要求項目となりますが,本質問以外にも問われることの多い質問を以下に記しますので,面接当日にその場で慌てることのないようこちらも事前にしっかりと回答内容を整理して準備しましょう!
●興味,関心事
-最近の出来事で,最も興味を持ったものは何か?
※社会に対する興味や関心の高さ,問題意識について
※一般論ではなく,自分なりの視点で物事を捉え,分析し,意見を持っているか?
●就職活動のスタンス/状況
-志望する企業選びの基準は?
(職業観,価値判断,仕事に対する考え方を問われる.企業を選ぶ際にどんな要素を重視しているのか?)
-他に志望している企業,選考状況は?
(どんな企業を受けているかで志望動機の強さ(他社状況は何故その企業を志望しているのか)を確認する)
●学生時代の学問に対する姿勢/勉強内容
-学生時代にどんな勉強をしてきたのか? 専攻を選んだ理由等
-卒業論文のテーマ(まだ決まっていなくてもある程度具体的に語れることが大切.何故そのテーマについて学びたいと考えたのか? どのような研究(調査)をするのか? 仮説と検証方法など)
●苦労話
-学生時代に大変だったこと,またそれをどのように乗り越えたのか
-学生時代に最も心に残ったことは?
-人生の中で最も一生懸命になったことは?
成績もいいし,そつはないし,スペックはいい.コミュニケーション能力もある.スムーズに最終面接までは進むのに,でも,なぜか内定が取れない学生がいます.最終面接で企業は,その学生が本当にウチの会社で働きたいか,ちゃんと真面目に働いてくれるのか,覚悟や本気度を問う.最終面接を突破できない学生というのはそこが弱いことが多いです.
熱意や情熱は心から訴えかけなければ相手に響きません.淡々と相手の質問に答えるのではなく,時には身振り手振りを交え,御社にどうしても行きたい という姿勢を前面に出して面接に臨みましょう!
就活の面接対策
7-3.就活において最後に必要なものは情熱(passion),精神的強さ(toughness),諦めない気持ち(never give up)である!
ES,筆記試験,面接,どの段階でも落とされるのは嫌なものですが,最終面接が突破できず,内定の一歩手前で落ちた時のダメージは大きい.最終面接不合格が続くと精神的に堪えます.
採用の最前線にいると,採用選考の仕組み/運営の非効率さや,人間臭さをしみじみと感じます.何度も言うように,企業に明確な指針や基準が存在しません.人が人を選ぶので当然とも言えますが,曖昧さを排除する仕組みが導入されていないため,能力以外の部分,つまりは運や縁の要素も大きく影響します.
一言で言えば,リクルーターや選考官に好かれてしまえば,内定獲得が容易になります.ただし,好かれやすさや人間性に要因を丸投げするわけにはいきませんので,運と縁を引き寄せるために大切なことは何であるかを示したい.それは,
「情熱(passion)」「精神的強さ(toughness)」「諦めない気持ち(never give up)」
です.すべて感覚的/感情的なものですが,この3つを備えることが最後の最後で重要になってくると断言します.ここまでは論理的かつ戦略的な対策をレクチャーしてきましたが,本項ではあえて精神論の部分について言及します.
例えば,逆に効率的な採用形式とはどんなものか考えてみましょう.
①徹底した性格検査により,問題のありそうな人間を間引く(倫理観や企業理念に合わない人間を判別)
②ペーパー試験で基礎能力に達していない人間を除く(求める以上の水準の能力かを判別)
③ESで努力内容や達成したこと(できるだけ定量的に)で選別(物事への取り組み姿勢や適応能力を判別)
この3項目を確認した上で,面接は同じ人間(少数精鋭)が対象とする学生を一律に見て,その中で優れている(採用したい)人間を順位付けして選んでいくのが戦略的ではないでしょうか? 面接を段階的に実施していけば,偏りが発生する確率はずっと少なくなります.
しかしながら,採用の現場ではまったくこれと反対のことがまかり通っており,非効率で非戦略的な選考が実施されています.リクルーター面接などはその最たるものといえるでしょう.上記で紹介したような,明確で定量的な判断基準はなく,感情論や好き/嫌いで選別する傾向が大いにある.ということです.
だからこそ,能力以外の部分で頑張れることがあります.それは,就職活動/面接に取り組む姿勢/態度であり,改めて見つめ直してください.
第一に「情熱(passion)」.相手に熱意が伝わらなければ心を動かすことはできません.近年淡々と面接に応じる学生が増えているように思います.冷静さを失ってはいけませんが,ある程度の感情表現は相手に訴えかける力を持ちます.選考官のタイプとTPOを読む必要はありますが,志望度の高さや熱意を全力で相手に伝えましょう.特に志望度の高くない企業では,それが態度に出てしまいやすいので要注意です.練習や保険で選考に臨む姿勢は相手に伝わります.どうして自分の企業に入りたいと真剣に思っていない人間を好意的に見られるでしょうか? 受ける企業はすべて第1志望の姿勢で臨むべきです.
次に「精神的強さ(toughness)」.メンタルが弱い人間を企業は嫌います.圧迫面接や嫌な質問に対するとき,人の本性は現れてしまうものです.そこで黙ってしまったり,切れてしまったり,ウンザリした態度を取るのはNGです.無能な選考官や下品な面接官も少なからず存在します.社会に出てお金を稼ぐためには,嫌な人間でも柔軟に対応できるスキルが重要です.それを試されていると考えて学ぶ姿勢で臨みましょう.また,女性でたまに泣いてしまうケースがありますが,涙を流した時点で不合格になると覚えておいてください.悔し涙だろうが感涙だろうが涙は絶対にNGです.気をつけましょう!
最後に「諦めない気持ち(never give up)」.スラムダンクの安西先生の科白を引用するまでもなく,しぶとく粘り強く頑張り続けることはなによりも大きな力となります.就職活動では辛いことや理不尽なことに多々出くわすでしょう.それでも落ち込んでいる暇はあなたにはありません.心を切り替えて次に向かうのです.この経験がきっとあなたの糧となり,苦労した分だけ内定(成功)の果実は嬉しいものになるはずです.半年間の選考レース,諦めず頑張り続ける人間になりましょう!
当たり前なことですが,どんなに優秀な人間でも,一緒に働きたくないと思われてしまえば,落とされることは往々にしてあります.逆もまたしかりで,就職活動だけでなく社会に出てからも好き嫌いは非常に大きな影響力を持ちます.相手に媚びる必要はありませんが,常に謙虚な姿勢で,家族や大切な仲間に対するのと同じくらいの思いやりを持って相手に接しましょう!
8-1.最終面接で意識すべきこと,内々定の提示を受けた時の対処法
これまでの努力により,あなたは最終面接を迎えます.最終面接は「初デート」や「初キス」より緊張するとのアンケート結果もあり,緊張はMAXかもしれませんが,自分を信じて悔いの残らぬよう頑張りましょう.結果,あなたは評価され,次のオファーが企業(採用担当者)から提示されることでしょう.「内々定です!」
志望度が高い企業であればあるほど,努力した量が多ければ多いほど,目標が達成されるのは嬉しいものです.しかし,この「内々定」という言葉と一緒にあなたに選択を迫ってくる場合があります.結論をひとことで言えば,どんなケースであれ「満面の笑みで内々定を受理せよ」というのがアドバイスですが,いろいろなパターンに合わせて,その時に取るべき対応について説明します.
①「是非君に弊社に来て貰いたいと思っている.弊社に決めてくれるのであれば内々定を出すがどうだろうか?」
②「内々定です.是非君と一緒に働きたいと思っているので,弊社に決めて貰えるだろうか?」
③「内々定です.他社もまだ選考が進んでいるとは思うが,是非君が欲しいので1週間(提示期限)で意思を示して欲しい」
上記が一般的な内々定のオファーになります.言うまでもなく,例で示した順番に紳士的なオファーになります.また,この内々定の提示が面接後にあるのか,電話であるのかによっても対応を若干変える必要がありますが,TPOに合わせた基本対応方針をレクチャーしていきます.なお,本事例は第一志望の企業以外からの内々定の提示を受けた場面を想定しております.
先ず①のケース.「弊社に決めると約束するならば内々定を出すがどうか?」 とその場で内々定という果実をチラつかせ,選択を迫る状況です.企業の採用姿勢として最低とも言えますが,実際にはこのようなケースは少なくありません.ではこのような決断を迫られた場合にはどのように対処するべきか?
「ありがとうございます.御社が第一希望なのでありがたく内定頂戴します」 もしくは,
「わかりました.他の企業の選考も進んでいましたが,御社が第一希望ですので(第一希望に変わりましたので),御社でお世話になります.よろしくお願いします」
と笑顔で答えましょう.次項で説明しますが,内定企業は後でゆっくり一つに絞れば問題ありません.その場では相手の求める通りの回答をして,内定を貰ってしまいましょう.粘着質の企業では,他の企業の内々定や次回選考をその場でキャンセルするように.といった対応を促される場合があります.その場合は次のように対応しましょう.
「いつも非通知で電話があるので番号はわかりません.メールで連絡するように指示されているので,帰宅してから辞退の連絡をするようにします」
このように前向きかつ臨機応変に答えると良いでしょう.
最悪な回答は「まだ他の企業(第一志望の企業)が選考中ですので考えさせてください」という回答です.そんなことはわかっていてその企業の採用担当者は結論を迫っているのです.自社に決める気がないと判断されてしまい,「では残念ですがそちらを頑張ってください」という流れにならないとも限りません.そのようなケースはレアで,自社に決めるよう説得されるパターンが多いですが,面倒臭い上にここで揉めてもなんのメリットもありません.揉めた後その企業に決めたとしても,「あいつは第一希望の企業に落ちてうちに来た」との印象を与えます.であるならば,喜んで内定を受理するのが大人の対応であり,自身におって一番得な選択ではないでしょうか?
どうしても嘘をつきたくなければ,相手を立てつつ考えさせて欲しいと言うしかありませんが,馬鹿正直に答えるデメリットとして,負わなくて済むリスクを負う可能性があることを理解しておきましょう.
次に②のケース.内々定は決定事項として提示してくれる.ただし,自社への決定を促すケースです.こちらも対応方法は①と同じです.「ありがとうございます.御社が第一希望なのでありがたく内定頂戴します」と回答しましょう.もし,その回答がしたくなければ,①よりも少し余裕がありますので,
「他企業に内定/選考辞退の連絡をするので,●日間(最大1週間程度)待っていただけますでしょうか?」
と回答して時間を稼ぐことも可能です.ただし,猶予期間後には決定を促されますので,その時点で心が決まっていなければ,同様に内定受諾の回答をする流れになります.基本的には最初から内々定を受理しておくことをお勧めします.
最後に③.内々定を提示した上で,猶予期間を貰えるケースです.非常に懐の深い企業ですね.学生からの信頼も得られるでしょうから,すべての企業にこのスタンスを取って貰いたいものです.このケースでも,①&②と同様に
「ありがとうございます.御社が第一希望なのでありがたく内定頂戴します」
と回答しましょう.
もしくは,
「ありがとうございます.御社が第一志望なので決定するつもりですが,現在進んでいる企業に内定/先行辞退の連絡をするので,確認出来次第期限内に連絡します」
とでも回答しましょう.猶予を与えられた/与えられないに関わらず,内々定を笑顔で気持ちよく受理するのが一番得策です.
心の葛藤や悩みは自身で考え抜くか,家族や友人に相談する事項であって,企業(採用担当者)にぶつけるべきではありません.相談してどんなメリットがあるというのでしょうか? それを冷静に考えてください.
驚くことに少なくない学生が内々定の決定を迷う態度を示します.正確な人数を把握したいとはいえ,企業側の姿勢の問題も大いにありますが,就職は自身の人生の大きなターニングポイントです.じっくりと考えて自身の納得のいく決断をするべく時間の猶予が必要ではないでしょうか.であれば,内々定は確実に受理して,内々定を貰った企業の中からゆっくり選べば良いではありませんか?
次項で記しますが,内定辞退は最後に丁寧な連絡をすればまったく問題はありません.誠実さは真面目さと同義ではなく,社会は綺麗ごとばかりではありません.せっかくの就職活動の頑張りの終わりを気持ちよく迎えるべく,前向きな内々定受諾の態度を心がけましょう.
8-2.内定拘束,内定承諾書,内定辞退のタイミング&対応方法!
内々定は笑顔で気持ち良く受理するのが得策であることは理解いただけたでしょうか.しかし,企業から内定承諾書(誓約書)の提出を求められたらどうすれば良いのか? という質問も多く受けます.また企業によっては内定拘束という露骨な他社選考妨害の対応を取る企業もあります.そんな企業にどのような対応を取れば良いのかを内定辞退の方法と併せて説明します.
最初に内定承諾書について.この書類に法的な効力はありません.みなさんには憲法22条で守られている「職業選択の自由」があります.内定承諾書はあくまでも採用活動における,あなたと企業とが交わす「約束」の意思表示であり,そのことによる罰則を設けることは労働基準法第16条で禁じられています.先ずはこのことを覚えておきましょう.
そのため,内定承諾書の提出を求められたならば,素直に提出することを勧めます.何故なら,本命(より志望度の高い)企業の日程が確定していて,正直に提出の保留を願い出たとしても,保留理由の説明を求められ,面倒なやり取りが発生するからです.内々定受理時の態度の整合性の面からも一貫した態度を貫き,承諾書も要求される通りに提出するのが適切な対応です.就職先を決定するかどうか不確定であるのに,わからないことで揉めるのは時間の無駄であり無意味だと思いませんか? であれば,素直に内定承諾書を提出して,相手企業を安心させてあげましょう.
ちなみに,内定承諾書提出後に辞退をすると企業に迷惑がかかる とか,大学に迷惑がかかる,他の学生の機会を奪うことになるのですべきではない.といった意見もたまに耳にします.一理あるように見えてこのような意見を述べる者は,天秤の重しを測り違えている偽善者でしょう.自身の人生の選択をこんな対象と比べられるのでしょうか?
企業は馬鹿ではありませんので,内定辞退も考慮に入れて採用数を調整しています.また,丁寧な辞退の対応を取れば大学に迷惑がかかることもありません.また,あなたが辞退すれば他人が幸せになる確率が上がるとでもいうのでしょうか?
これらを認識すれば,ギリギリまで「内定キープ」することが戦略として優れていることは言うまでもないでしょう.
次に内定辞退の方法です.内定承諾は採用する側とされる側の信頼関係で成り立つものです.辞退先の企業や人と再会する可能性もゼロではないですし,お世話になったケースも大いにあるでしょう.そのため,内定辞退は丁寧かつ誠実にふるまうことを心がけてください.第1にメールではなく,担当の方に電話で連絡をすること.第2に辞退が確定したらなるべく早い段階で連絡を入れること.第3に評価してくれた御礼と申し訳なさを伝えること.この3点に留意すれば,内定承諾書を提出した後であろうが,綺麗なクロージングができるでしょう.本留意事項を踏まえた辞退報告の流れをレクチャーします.
①内定辞退の報告である旨をまず明確に伝える
②御社から内々定の提示を受け,物凄い嬉しく,御社にいくつもりで承諾書を提出した.
③他社に辞退の報告をしたところ話を聞いて欲しいとの引きとめがあり,丁寧に断るのが筋だと思い会ってきた.
④この企業からいろいろ話を聞いたところ,御社が第一志望であった気持ちが揺らいだ.
⑤悩みに悩み,じっくり考え抜いたところ,この企業にいくという結論に至った
⑥御社には評価いただき,内定承諾書も提出し,大変お世話になったにも関わらず,申し訳ないと思っている.
⑦大変勝手で申し訳ないが,内定辞退とさせていただきたい.この意思は揺らがない.
承諾書の提出項目は状況によって変えていただき,内定受理時に取った態度と一貫性を持って丁寧に対応を取ればまず問題はありません.期間は内々定受理から遅くとも1ヶ月程度以内には連絡するのがベストです.ただ,次項で説明しますが,内定者懇親会参加後に決める等の選択もありますので,急ぐ必要はありません.なるべく早くを心がけながら慎重にタイミングを見極めましょう.
一点例外として,内定式/正式内定(10月1日)以後の辞退はご法度です.もっと言えば,内定式の準備等の期間を考慮し,お盆前(8月上旬)以降の内定辞退はしないよう気をつけましょう.それこそ,信頼関係を損なったり,大学に迷惑をかける事態に発展しかねませんので,その点だけ気をつけてください.
最後に内定拘束について.これはいったいどのようなものかというと,同業他社の最終面接の日程がわかっている時などに,内定者交流会やOB交流会,会社勉強会などを開催し,身柄の拘束を図るものです.近年露骨な内定拘束を図る企業は減ってきたように思いますが,勉強会という名目で,ちゃっかり内定学生を囲い込むイベントを開催する動きは少なくありません.内定先企業がどれだけ強く参加を促してくるかにもよりますが,拘束日に他企業の選考が実施される場合には,「家庭の事情,単位,引越し,旅行」など一番上手く説明ができそうな嘘をこしらえて,丁重かつはっきりと不参加の報告をいれましょう(申し訳ない旨は伝えるように).数日に渡り内定拘束を実施する企業もあるので,その場合は御社に内定が決まったため,就職活動を終えて旅行のプランを立ててしまった.とでも回答しておきましょう.ただし,嘘はあまり気持ちの良いものではありませんので,基本はなるべく参加して,どうしても他社とバッティングして,その企業にいく可能性がある場合にのみ不参加とするなど,バランスを考えて対応するように留意しましょう.
内定をキープし,内定ホルダーになるのも就職活動の重要な戦略の一つです.自慢するために内定をいくつも持つのはいただけませんが,人生の選択肢を増やすためにも,バランス良く立ち回りましょう.
内定先の選び方
8-3.内々定を得た後にやるべきこと,大学4年生の過ごし方
さぁ,志望企業からの内々定を得ました.おめでとうございます! 複数の企業から内々定を得てどこに決めようか贅沢な悩みを抱えている方もいるでしょう.あなたは就職先をどんな理由で決めますか?
『収入?』『ブランド/ネームバリュー?』『安定性/将来性?』『勤務地/仕事内容?』
是非もう一度自己分析を振り返って,自身が望んでいることがその企業で実現/充足できそうかを冷静に考えてください.というのも,イメージやブランド/ネームバリュー優先で就職先を選ぶケースが多く見られるからです.もちろん,どの企業に就職するのであれ,職場環境や人間関係は配属先によって異なってきますし,得られる情報というのは限られています.それでも,現時点で得られるだけの情報を収集し,内定先の中から納得して就職先を選択することが大切です.というのも,迷いを持って選択した企業で辛いこと,苦しいことがあると,別の企業に決めておけば良かったと自分に言い訳することにもなりかねないためです.そんな事態を招かないために,選択を間違わないためにやるべきこと,是非内々定後に実施してもらいたいことについて説明します.
①内定者懇親会に行こう!
大抵の企業では10月1日の内定式の前に内定者を集めた懇親会を実施します.このイベントでは同期となるメンバーの確認と,リクルーターや人事担当者等,企業からも社員が参加して,内定を祝う目的と連帯感を意識させる目的で開催されます.この内定式に参加することで,同期の人数や価値観,雰囲気等をかなり掴むことができます.一緒に頑張っていきたいというメンバーが揃っていれば自身に合っているのではないか,と思えるでしょうし,雰囲気が望むものと違っていれば本当にこの企業に入社しても良いのかを再考するキッカケになります.肌感覚は非常に重要であり,同期は長い付き合いになりますので,複数内定を持っている場合は,それぞれの内定者懇親会に参加し,積極的な交流と情報収集を心がけましょう.
なお,参加している社員は企業から選抜されたメンバーであり,概ね優秀層かつ会社に不利になる情報はまず口にしませんので,綺麗なことしか言っていないはずというくらいの意識で聞くことをお勧めします.
②OB/OG訪問をしよう!
内定を得た今だからこそOB/OG訪問をしましょう.就職活動前や初期に,情報収集や志望動機の作成のためにOB/OG訪問をすることは,リクルーター制を取っている企業以外ではあまりメリットがありませんが,内定した企業の情報を得るためのOB/OG訪問は非常に重要であり貴重な情報を得られることでしょう.
そしてなによりもEXCEL.EXCELは表計算やグラフ作成ができるだけのソフトではありません.高度な計算からデータベース作成,ひいてはシミュレーション等,非常に幅広い業務に求められる機能が備わっており,もしもEXCELのすべての機能を理解/習熟し,目的に合わせた使いこなしができるようになれば,それだけで生涯仕事に困ることはありません.それも,貴重な人材として優遇されることでしょう.と断言できるくらいのツールです.自信を持ってお勧めします.MOS試験(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)等の資格もありますので,そちらにチャレンジするなど,EXCELスキルの向上を目指して勉強しましょう!
そして最後に学生生活の最後をどう満喫するかの計画です.語学留学や旅行など,チャレンジしたいと思い描いていて,未着手であったことにいまこそ踏み出しましょう.内定が決まると残りの学生生活をアルバイトで費やす学生が少なからずいます.お金がなければなにもできない…という意見ももっともですが,やむにやまれずバイトに追われているのであれば,
「もったいないので借りませんか?」
と提案します.既に奨学金が何百万円になっている方にはお勧めできませんが,大学4年生の自由な時間を謳歌するために,給料の前借りだと考えて借りるのはいかがでしょうか? 時はどんな金にも代えがたい最高の価値であり,あなたはいまそれを手にしているのです.
例えば, 毎月10万円の奨学金を半年借りると総額60万円です.あなたがそれなりの企業に内定できていれば,1年目の夏+冬のボーナスで50万円~100万円程度キャッシュが入ります.そう考えれば,いまこの自由な時間を充実したものにするため,奨学金を借りるのは一つの有効なアプローチだと思いませんか? 親に借りられるようであれば親から借りるのが一番でしょう.いずれにせよ,青春時代の最後の自由時間をいかに過ごすのか,素敵な思い出づくりの計画を立て,
「学生時代はめいいっぱい楽しんだ.さぁ頑張って働こう!」
と4月から清々しいスタートとなるよう楽しく充実した学生生活を刻みましょう!
最後に次の2つの言葉を贈ります.本書を手にした読者の一人でも多くの成功を祈念して.
「状況?何が状況だ.俺が状況をつくるのだ.」
By ナポレオン・ボナパルト
「人生は全て次の2つから成り立っている.したいけど,できない.できるけど,したくない.」
By ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ